とある中年女性の日記

一人の時間と惰眠を愛するわたしの脳内と暮らし

昨日読んだ本 ジョージ・オーウェル「1984年」

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

昨日は休日でしたが台風でどこにも出かけられなかった。こんな時は読書、それも普段まとまって読めない、それも名作でしょ、と思って、kindleからダウンロードしてあったこちらを読みました。

ブログで324件取り上げられてる。Amazonのレビューも充実。星も4.5。

だけあって、読み始めたら止まらない止まらない。文学少女に戻って一気読みでした。

しかしkindleで一気読み、目が痛い…。

 

内容

内容(「BOOK」データベースより)
“ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが…。二十世紀世界文学の最高傑作が新訳版で登場。

 

ネタバレありの感想

あまりに怖ろしく、しかしリアルな設定と旧人類的人間性を隠し持ってる主人公の葛藤に冒頭から引き込まれます。途中、この「全体主義の概要」を説明する箇所が長く、うっとおしく、ちょっと難解なのですが、ここは頑張って読む(意味があります)。

その後、物語は起承転結の「転」で主人公は拷問にかけられ恐怖の「101号室」へ。

(なんか「101号室」ってキーボード叩くだけで寒気がします)

そして救いようのない「結」へ。

 

 主人公はジュリアと出会い、恋に落ちたことことをきっかけに突然気が大きくなり、いろいろ画策し始めます。で、どんどん大胆な行動に出て行く。この「恋に落ちていく」ところの描写がなんとも滑稽で素敵でした。だって、世の中はえらいことなってるんですよ。実の子供がスパイとなって親を突き出したり、過去の歴史の改ざんに膨大な時間と労力を費やしたり。当然主人公はそれに与しなければならない立場なのに。恋に落ちるや否やそんなことより「彼女が心変わりしたんじゃないか」ということや「逢いたい、触れたい」ということが第一次的問題になっちゃってるという。なんとおめでたい。

 そして彼は、このジュリアとの恋がなければ反政府地下活動に足を踏み入れることはなかったんだろうな…と思う。それほど「恋」は人をバカにさせちゃう、「勇気」を与えてくれる。ここが私が思うこの小説の美しい部分の一つです。

 そして、その恋愛と反政府的ふるまいを通じて主人公は今までに感じなかった感慨を持ち始めます。プロレ(人口の85%を占める労働者階級。動物のように政府から管理されている、ことになっている)のおっかさんに女性美を感じたり、化粧をし香水をつけたジュリアに興奮したり、興奮した後のうたたねに幸せを感じてみたり。物質的なものではチョコレートやコーヒーにみられる小確幸(主人公にとっては大確幸かな)。

 今のところ私たちはこういうもの当たり前に享受してるわけですが。この箇所読んでほんとにそういうものがなくて何の人生か!?と認識し深く心に残りました。

 

 その後、恋は盲目という言葉どおりいろんなものを見逃しちゃっておマヌケ状態にあった主人公はあっさり党に捕まっちゃうわけですが。この密告者ね。「怪しいやろ」って思っていた読者は結構いるんじゃないかと思うんです。でも主人公は恋のパワーである意味世界が美しく見えちゃってたのか。でもそんな風に楽天的に世の中を見られるほうが幸せに違いないけれど。

 

 そして、恐怖の拷問が始まるのですが、その記述が怖ろしいことは当然として、例の「101号室」。ここで主人公はジュリアを完膚なまでに裏切ってしまいます。その後、主人公は腑抜けのようになってしまいます。この「腑抜け」にさせる手口ね。ほんと上手いやり方だなって思います。だって主人公はジュリアとの恋に「人生の美」「生きる意味」「人間の尊厳」を見出していた。というかこの小説の世の中で唯一それがそれ(This is it)だったのだと思います。そこを打ち砕く、それも自らの意思で打ち砕かせる、という手法。主人公は自分の意思でジュリアと自分自身を欺き、当然そこには抜け殻しか残らないという。

 党は、その抜け殻=空白に例の「ビックブラザー」思想を注入し、それは成功するのですが、もうそこに注入するものはなんだっていいんでしょうな。2+2=5でも、10でも良い。ああ、陰鬱な気分です。

 

 物語の終わり数ページ前に、幼少期の主人公が実の母と自宅で過ごしたエピソードを回想するシーンがあります。これ、なんで作者は入れたんだろうな…だってせつなくて、読むのが辛くて。一番印象に残った箇所かもしれないです。

 

 

追記:kindleには有名なトマス・ピンチョンの解説は付いてませんでした!大きい本屋さんに行って立ち読みしてこようと思います。

 

 

以上でした。